モクズガニ(カニのなかま)
『モクズガニ』は日本全国の川にいます。
それぞれの地方で呼び方がちがいます。熊本では、『カワガニ』や『ヤマタロウガニ』と呼ばれることがほとんどです。しかし、図鑑での正式な名前は、『モクズガニ』です。
はさみ脚に筆のような毛がびっしり生えているのが特徴です。藻屑が生えているようにみえることからつけられました。英語では、『ミトンクラブ(mitton crab)』といいます。
遠い昔、生き物は海から陸へと進化したのだそうです。
モクズガニと同じように、川にすむ『サワガニ』や『アメリカザリガニ』は完全に海との関係を切って川で一生を終えますが、この『モクズガニ』は、卵を産むために何10㎞も川を下って、河口や海まで行き、そこでお相手を見つけて結婚します。その後、オスは死に、メスは何万個という数の卵を産んで、ひと月ほどお腹に卵を抱きます。そして海の水の満ち引きが大きな大潮の日に卵の中で育った赤ちゃんを海水に放します。そうして後、一生を終えます。
死体は、河口や海岸近くにすむカニや貝たち、鳥たち(特にカモメやサギの仲間たち)などが食べてあとしまつをしてくれます。
生まれたモクズガニの赤ちゃんは、まだカニの姿をしていません。ゾエアとよばれる姿で、海でプランクトン生活を送りながら数回脱皮して大きくなっていきます。ひと月あまりすると、生まれた川へ帰ってきたのち、脱皮をして、やっとカニの姿となります。
それから、脱皮をくりかえしながら、熊本市・菊陽町・大津町・西原村・阿蘇市や南阿蘇村・高森町へと、白川をさかのぼっていきます。この頃には、数万匹生まれた兄弟たちも、数匹になっています。
数年後、結婚できる時期となると、海をめざして、再び川をくだって河口や海へと移動します。子飼橋付近でも、秋には昼間石の下に隠れている、川を下る途中の『モクズガニ』に出会うことができます。また、初冬には、川をさかのぼる小さな『モクズガニ』に出会うこともあります。
『モクズガニ』は、まだ海との縁が切れていない進化の途中にある、一生のうちに川と海を旅するカニなのです。魚のサケやウナギ・アユなど、またヤマトヌマエビなどと同じ生活史をもつカニなのです。